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ススキマリン新型23feetセンターコンソーラー
EXANTE 試乗記
デビュー
(2010/02/09)
ソレは、2007年某日のJACKの発売に向けた会議での席上でのこと。
今だからいえるのだが・・・、

今回はエントリー層に向けた23フィート艇"JACK"をリリースいたしますが、
同時に、現在研究と模索段階ではありますが、よりアッパーなニーズにも応えられる
同程度のサイズのボートも近くリリースできれば・・・と思っています。


・・・という、お話を聞いていた。
そして、その船の内容は???という問いに対しては・・・。

確かにJACKは価格を度外視したよく作りこんだセンターコンソーラーであるのは
間違いないのだが今のところ言えません。


ということで・・・今となっては、"そのボート"がこのEXANTE/エグザンテだったということだ。
前置きはさておいて、2/9-10の2日間、大分はヤンマー造船にて試作艇の最終テストがありましたので
こちらのレポートをしたいと思います。

まず、以前もヤンマーのEX46のテストのときに来た大分ヤンマー造船ですが、仙台からのアクセスが
異常に悪い。仙台〜大分直行便がないので、仙台から東京まで新幹線。そこから山手線て新橋まで
行って東京モノレールで羽田、羽田から大分という"水曜どうでしょう"みたいなハードな移動を余儀なく
される。まぁ、そんなこんなでヤンマー造船に到着した。

大分空港についてしまえば、こちらのもの。大分のヤンマー造船は大分空港のすぐ隣。今回はスズキ
マリンの手配でバスがありましたのでまたよかったのですが、以前のEX46の時はタクシー移動でしたの
で本の2-3分程度の移動でタクシーのドライバーさんへは大変悪いことをしてしまった。
(ヤンマー造船は滑走路のエンド部分にあるので、車で行けば数分なんだけど歩くととんでもなく掛かっ
てしまうのだ)
なんとかヤンマー造船到着
ヤンマー造船に到着するも、雨が降っていて天候もいまひとつではあったが、我々が構内をウロウロ
しているうちに晴れ間が覗いて来た。

まずは、上架状態にあったEXANTEを発見。早速イロイロ見て回る。

今までの国産艇にはないボリュウム感がイイ。

シャープなVとグラマーなハルはいままでにはない。

デッドライズも深い。ライズしたシアーライン。

DF175をフルティルトしても余裕。

特殊形状のリーニングシートも標準装備。

アフトデッキも広大だ。

バウデッキへの移動も安心。デザインもいい。

キャビンの位置も前過ぎないしバウ部がセクシー
上架状態でのEXANTEの印象としては・・・
ああ・・・、
やっとボートっぽいボートを見たな。
という印象。

判りにくいとおもいけど、"船っぽい船"ではなく"BOATっぽいBOAT"ということ。

ソレが何かというと、今までよく見る(よくある)国産艇って、艇体が細くて長くてシアーラインもストレート。
各部構成の線も細くて直線で素っ気無く、しかもなんとなく出てくるオーラが貧弱なものが多い印象で
あった。

なんとなく和船から派生して、ボートっぽく作った印象を拭い去れないでいたように思うけど、
このEXANTEは各部位の構成や、ラインも芯が入っているけどプックリしていて
ハードトップのカタチは好みが分かれると思うけどハルのカタチは、・・・なんというか・・・水の流れや
風の流れがスムーズに後ろに流れていくような線で、(由良拓也先生風にいうと風が見える???-笑)
しかも無理がなく、和船とはかけ離れた、いままでの日本にはない"BOAT"としてデザインされた印象を
強烈に感じた。

・・・といったところで、早速試乗しましょう。
ワシャワシャと乗り込んで早速インプレを・・・(笑)

試乗には175仕様と140仕様が用意された。

また比較としてX-24/BF135とJack-DF80も用意

Vは深いが、どっぷり沈むわけではない。

シルバーの窓枠止めがわかるだろうか。
キャビンサイドのブルワークも高く、デッキは段差がない。バウデッキ部分は更に安心の高さだ。
標準装備のリーニングシートは3本足で特殊形状。2人掛けも可能な幅を持たせている。

左右への移動にも邪魔にならないデザイン。

ハードトップの高さも十分で視界良好。
まずは、桟橋より乗り込む。
ブルワークが深い為、足を高い位置まで振り上げる必要があるが、跨がずにブルワークトップへワンステップ
するイメージであれば問題ないであろう。

完全に乗り込んで最初に思ったのは、バウデッキからアフトデッキまでに
段差が一つもないフルフラットデッキで、一切デコボコがない。
しかもブルワークまでの高さがとても高く、ふんわりとしたアールに包まれる感じで今までのどの23feet艇とも
違うなんともいえない安心感がある。

シャープなVのバウ部分と切れ上がったデットライズから、けっこうゴロゴロした(ロールね)感じになるかと
思ったら、そうでもない。全幅2.5mであっても、船底の角の部分からほぼ垂直に近く立ち上がるので、
(数値上の幅が実際の幅に近いイメージ)思った以上に浮力があるのろう。

実際、DF175を搭載した乾燥重量が1.5トン程度ということだったので、ソコソコ重量もあり、外乱に対しても
影響はされにくいだろうともいえる。

今回の試乗テストに当たっては、DF175仕様、DF140仕様のEXANTE2隻、比較用に同じ23feet艇のJackに
DF80を搭載したもの(パワーの話は当然できないけど)と、X-24/ヤンマーFX24c-ホンダBF135仕様が用意
されていたので、わたしはDF140仕様から乗り出した。

まずはDF140仕様での出航。
しかし平和だねぇ・・・。ヤンマー造船は大分空港の滑走路エンド脇。
結論から言うとDF140仕様では平和そのものだ。

DF140独特のフィーンというハミングするような吸気音とあわせて、DF175仕様の起こした牽き波に全速で
飛び込んだ(ハーフティルト27ノットだった)りしたが、平和そのもの。

サイドからはド派手にスプレーは上がるものの、不快なパンチングはほとんど感じない。これは、シャープな
Vで切り裂き、逆エッジ気味についているチャインが、まくりあがっている海水と飛び散るしぶきを叩き落す
ことによるものだろう。

互興マリンのある穏やかな松島湾では、このDF140仕様を選択した場合はリモコンレバーはONかOFFの
(全開か全閉)スイッチにしかならないかもしれない。そのくらいスムーズでしっとり安定していてる。

DF140仕様としての印象として例えるなら、とても優秀で、且つロングストロークなサスペンションを装備した、
ちょっと前のジャグワーのサルーンやレンジローバーにも似た乗り味の車に乗っているようで、常にクールで
(涼しい顔で)いられるボートのようだと言える?かな。(わかる?)

続いて、DF175仕様に乗り換えた。

続いてDF175仕様

ドデカイ175を搭載しても全然負けてない。
スターンをグッと潜らせ、猛然と加速しているDF175仕様がこのボートのキャラクターとしては
合っている印象だ。また、航行中ド派手なスプレーを上げるが、不思議なほどデッキ上はドライだ。


当然だけど、基本的な印象は変わらない・・・が、DF175となれば、35馬力の差もあるけど2.7リッターの
排気量を生かした、大排気量4気筒独特の低速域から"グググッ"と立ち上げるトルクフルな加速感が、
この安定感この上ない艇体をスムーズに持ち上げ、ほぼハンプを感じさせずに一気に37ノットオーバーの
世界へと誘ってくれる。(チルトを目いっぱい蹴り上げて、GPS読みで37.4ノットであった)

ストーンと切り落としたようなシンプルなトランサムゆえ、強烈にアスターンを掛けるとモーターウエルから
海水が溢れそうにもなるけど、アスターンでフッキングしたカジキを追っかけるようなことをしなければ(笑)
ほとんどの場合はそんなシチュエーションは皆無だろうし、何度か全速で高波に立ち向かってフルジャンプ
してもフワッとお尻から着水してまったく不安な挙動もしなかった(ドライバーはね・・・-爆笑)ので、このボートの
キャラクターからは、DF175仕様がベストマッチだろうとおもう。

車で言ったら、何かな。メルセデスよりBMWかな。よりスッキリしたスポーツマン的なイメージ。
レンジローバーもヴォークではなく、レンジローバースポーツって言うような印象?(わかりにくい???)

より軽快で、ダイレクトな感じがした。

そして何より、ハンドル位置が
船体の中央にあるのがいい。
(全長に対してね)

よく考えて欲しい。

特に船外機艇の場合は、ヒッチングの中心軸となるのは重量バランスから言っても船外機付近となる。

つまり、
ピッチングによる上下の揺れが
あった場合には、ハンドル位置が
前にあればあるほど大きくなり、
後ろにあるほど小さくなる
のだ。
仮に、同じ23feetのボートで極端にバウ側に操作部がある場合は、
海況が悪くなるほど、体への負担が大きくなるのだ
凪のときや、ゆっくり走るときは全然関係ないけどね。

かといって、バウデッキもアフトデッキも狭いわけではない絶妙なレイアウトとデザイン。

そもそも、ボートなんていうのは尖がった乗り物で、レーシングカーのようなものである。
あれもやりたい、コレもやりたい・・・となると中途半端な乗り物でなんだかボヤケたイメージですぐ飽きちゃう。
→カロライナスキッフみたいに釣りだったらナンでもできちゃう例外的なのもあるけど、あれも雨風をしのぐ
キャビン的なものをスッパリ諦めて、"ペッタンコの四角い形"を許容できる大きな心がないと駄目だけど(笑)。
いわゆる、道具としての割りきりが必須だよネ。スキッフに関しては。

日本人ってのは、欲張りなもので、一つのものにナンでも詰め込んで多用途にしたがる人種だ。
→ラジオとカセットでラジカセ・・・みたいな。。。

今までの"船"に対してはそれでもいいと思うけど、コレに感じたのは"ボート"としてのオーラだった。
ある意味、この使い方をするためには、こういうものじゃないとね・・・という流れで、方向性を明確に
決めて設計段階からフィッシングギヤとしての必要なものを箇条書きにし、ソレを丁寧に突き詰めて
いったらEXANTEはこの形になった・・・といってもいいかもしれない。
そういう意味で、EXANTEに対する好き嫌いの好みはハッキリするだろう。

スズキが設計提案するボートで、しかもセンターキャビンのウォークアラウンドボートなので、いまさら
言うまでもなく"フィッシング"を前程にしたボートであるのだが、どんなフィッシングを想定し位置づけ
しているかということを僭越ながら私なりに勝手に書くと・・・、

少なくても、穏やかな入り江でじっくり・・・みたいのや、のんびり掛かり釣り・・・みたいな釣りにはハッキリ
言って向かないと思っていい。シャープなV船底を持ったボートの割には、奇妙なほどローリングは少ない
とはいえ、クーラーボックスに座ってジックリカレイ釣りをするのには、このブルワークは高すぎる。

逆に、少々荒れたチョッピーなオフショアでボイルした鰯の下に付いたアオモノを次から次へとポイントを
変えつつブッ飛んであるくように・・・、まるでアフリカの草原の中をライフル片手にハンティングするかような
(虐待ではありません。イメージです。)アクティブに、まさに絵に描いたようなスポーツフィッシングに
向いたボートであると位置づけすると、ブルワークの高さ、船底のVの角度、キャビンの位置など
その造詣の一つ一つがなぜこの形になったのかということが、とてもスムーズに自分のイメージと
フィットする。


そういった意味で"割り切った尖がったボート"であると思える印象で、乗っていてもとても気持ちがいい。

前傾しているように見えるハードトップ部も・・・チョイと走るとキッチリ水平になり、レーダーもキッチリ
仕事をする設計。
モーターウェル右舷部はスッキリして補機搭載も問題なく、オーバーヘットコンソールには国際VHFや
マリンオーディオ、バックアップの計器類も配置できるだろう。

スポーツフィッシングに割り切った(あくまで私の印象ね)ボートということで、各部の作りこみは当然抜かり
ない。アオモノ狙いではトリヤマも探したいし、夏場の突然のガスかかり(濃霧)なんかの時にはレーダーが
当然欲しい。

多くの船外機程の場合は、大型のシャフト船などと違って静止時と航行時のボートの姿勢が極端に異なる
場合がある。静止時にセッティングすると航行時に空を向いたりして、レーダーを設置してもなかなか上手
に働くようにすることは容易ではないが、エグザンテの場合は完全静止しているときは前下がりの前傾姿勢
のハードトップもシフトを前進に入れるとグッと水平になり、そこからハンプを感じさせない加速体制になる
ので、普通に航行してもきちんとレーダーが働きやすい設計であるようになっている(という印象)。

しかも、このハードトップ部分には、標準でオーバーヘットコンソールが準備されているので、このほどの
法改正で装備しやすくなった国際VHF(船舶共通通信システム)やマリンオーディオ、予備の航海計器なども
装着可能となっているのも見逃せない。
23フィート艇で、安心できる広いデッキ・・・というと、オマケ程度のカディーみたいな印象もあるが、手品のような
十分なカディーも持っている。手動マリントイレや、航海灯、200リッタータンクも標準装備だ。

ハンドル前には、大型ディスプレーの航海計器もあり、メーター類のレイアウトも単純にカッコイイ。

今回のこのEXANTEのテストに当たって仙台から6時間も掛けてやってきたわけだが、結果とても有意義なもので
あった。こんな素晴らしいボートを作り出していただいたスズキとヤンマーに感謝しつつ、より多くのオーナーに・・・、
というより、よりコアなオーナーに乗って欲しいなぁ・・・と、思いながらも・・・

沈み行く太陽に、"さて、何隻市場に投入できるかなあ・・・"と、そろばんを弾くわたくしでした。(笑)

雨にたたられながらも、別府に沈む太陽が夕日になるまで
EXANTEにを堪能しました。
【外部リンク】
スズキマリン-EXANTE
スズキマリン-DF140
スズキマリン-DF175
ヤンマー造船
【互興マリン内参考ページ】
JACK試乗記
FX24c-Evo.G/互興マリンカスタム
カロライナスキッフ試乗記
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