2007/02/16
スズキマリーナ浜名湖でDF300の試乗テストをしてきた。(スズキプレスリリース)
このDF300は、2003年に世界最大排気量、最大出力4サイクル船外機としてデビューした
DF200、225、250の発表から4年、これらのV-6テクノロジーをさらに熟成させてデビューした
300馬力の4サイクル船外機だ。(スズキDF300サイト)
55°Vバンク6気筒レイアウトはそのままに、3.6リッターから4リッターへの排気量アップと新設計された
各パーツで一気に50馬力アップの300馬力となっている。 (DF300の3D動画)
300馬力というと、どうしても最大馬力のパワーのほうへ目が行きがちだが、このDF300はシフトと
スロットル系を中心としたコントロール系が、今までのプッシュプル式の機械式ケーブルから、電子制御
リモコンボックスになっていることが見逃せない。ヤマハでのコマンドリンク、マーキュリーヴェラード
など、標準での電子リモコン採用はあるが、スズキではこの電子コントロールリモコンを標準採用する
のがDF300が最初となるため、そのシフトフィーリング(操作感)などがとても気になるところだ。
300馬力なんていうハイパワーだと、速いのは想像に難しくないし、しかも電子制御され、よく躾された
4サイクルエンジンなので、昔のキャブ式2サイクルエンジンのようにある回転から突然トルクが盛り上が
ってくるようなこともないから、エンジン本体よりも、今回はその電子制御リモコン系を中心に見て行こう
と思う。
当然4サイクル最大馬力となる300馬力のパワー(しかも2機掛け)フィーリングを確かめることも忘れず
に行いますがね・・・。へっへっへっ・・・。
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まずは、スズキマリンのテスト艇であるエッジウォーターの26に搭載されたDF300×2機の仕様から
試乗した。コレは以前DF250の試乗で使用したもの、同一個体だ。
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DF300はエンジンのスターと方法からして違う。
エンジンキーをONにすると、DFシリーズ共通のピー音とFuelポンプの音がするのは同じだが、
そのままキーを捻っても、キーは回らないしエンジンもスタートしない。
上の画像のように、右エンジンは右の、左エンジンは左のSTARTボタンを押すことになる。
プチッと押すと、セルモーターの"シュルルル・・・"の後に、スズキの電子制御燃料噴射装置"EPI"で
コントロールされた4リッターV6エンジンが"ゴウンンンンン!"とスムーズにスタートする。
(エンジンをスタートさせるまで長押しする必要はない)
私は、(テストのため)両方のエンジンを同時始動させてみた。←当然問題なし。
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(画像左)
コレがコントロールパネル(2機掛け仕様)。
右舷左舷のエンジンスタートとストップスイッチとティルトの"アップダウン"スイッチ。
その隣のセレクトスイッチは、ロアステーションとアッパーステーションのように、2系統で使用する場合
にコントロール系統を選択するときに使用する"セレクト"スイッチ。
その下が、空ぶかしをするときに使用する"スロットルオンリー"スイッチ。
その下が、左右のエンジンのティルト角度をシンクロさせる"シンクロ"スイッチ。
ティルトをシンクロさせて調整するときは、これまた新設計でキラッとカッコいいリモコンレバーの
ポート側についているティルトスイッチでコントロールする。
(画像右)
コレが、DF300専用リモコンボックス。
DF300は、他のモデルとは違い、前後シフトとスロットルをプッシュ&プルの機械式コントロールではなく
電気的にコントロールするシステムが標準装備となっている。
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操作してみた印象としては、節度感もあり非常にスムーズで違和感がなかった。
概ねいい印象だ。
個人的には、機械式ワイヤーケーブルのダイレクト感が、機械をコントロールしているという悦びが
ある気はするが、(耳や目以外にも、シフトが入った〜抜けたというインフォメーションが指にも
伝わって来ないな〜等とアナログな印象はイケスにでもしまって置いて)誰もがイージーにシフト
操作が確実にできるのはいいことだ。
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前置きが長くなったが、早速試乗をしてみる。 |
↑メーター下のボタンで様々な情報を表示。 |
ボタンスイッチ"ポチ"でエンジンかかって、即座にエンジンが安定するのはインジェクションのおかげ。
ちなみに、タコメーター、スピードメーターはマルチファンクションになっていて、液晶部分に情報表示。
タコメーターではエンジン回転数、エンジン温度、積算運転時間、大気圧、バッテリー電圧など、
船外機の運転中の状況をチェックができる。
スピードメーターでは、走航速度の表示はもちろん、燃料タンク残量レベル、燃費、走航距離、水深、
水温などの情報をチェックできる。(別途センサーが必要)←また前置きだね・・・。
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以前DF250の試乗のときも、この船(エッジウォーター26)だったのでフィーリングを覚えているけど、
離岸直後のデッドスローエリアから、全開可能エリアまでの移動の際のエンジン音が静かに感じた。
物理的な排気量の増大もあって、DF250と比較してもエンジンが20kgほと重くなっていて、
さすがのエッジウォーターも結構沈んでいたので、静かに感じたのだろうか。
→(シフトやスロットルのコントロール系が機械式から電子制御式になったこともあり、そのコントロール
系を動作させるモーターやらアクチュエーターやらが船外機本体に追加された事もあって、
機関重量が20kg程増加しており、2機だと40キロの増。ちなみに1機293.7kg。ステンレスプロペラ付)
しかしその反面、増大された排気量は各テストのために相当重くなっているエッジウォーターを
排気量を生かしたズ図太いトルクで、まるでスリングショットのパチンコ玉のごとく一気に加速させる。
もともと振動が少ないスズキの55°V-6レイアウトは吸気音の方が気になってくるくらいだったんだけど
その吸気音も新設計された水気を帯びた空気と水の分離を図るためのラビリンス(迷宮)経路のおか
げでだろうか、とても静かに思えた。 中速から全開域に関しても、音質が変わったというか、耳障りな
音が少なくなったというか・・・まぁそのような(良い)印象だ。
しかし、試乗のときに記録していたハイビジョンカメラのプレビューを見ながら、試乗を思い出してみると
50ノットまでアナログカウントされるメーターを一気に振り切った位だから、風きり音のほうが勝っていたの
かもしれない・・・などとも思ってみる。(ちなみに80ノットカウントのメーターもある)
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(2機掛けのオマケ)
船外機の2機掛けの場合は、ステアリングを切って
なおかつ、左右独立して前進後退をコントロール
できるから、自由自在に位置制御が楽しめる。
狭い桟橋間でも一気に回頭できるし、吹いてくる
風を読んで、バウスラスタ+スターンスラスタの装備
された船のように平行移動もできてしまうのだ。
600馬力なんで、速いのはわかりきっていたから
コレ以上のことは言うまい。
とりあえず今回は電子リモコンのフィーリングが
思いのほか良かったことをつかんだだけでも
ヨシとしよう。 |
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1機掛けのテストも、もちろん行った。
こちらのほうが、現実的(それでも???)だが、
テスト艇には、ソディアックのボトムリジットの
インフレータブルボートだ。
速攻でフルパワーインプレをしたのだが力強くて
こちらのボートも楽しくなってしまった。
エッジウォーターと違って、こちらはウインドシールド
も何もない船だから、異常気象でいくら暖かいと
言っても(仙台から行ったので、さらに暖かく感じた)
浜名湖の湿った空気がしっかり防寒したつもりの
全身を50ノットを超えて進入してくる。寒い・・・。
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↓さらに抵抗の少ない新設計のロアギヤケース
90馬力以上のオフセットドライブシャフトを採用した
スズキ船外機は、機関重量の重心の最適化と
水中抵抗の少ないロアギヤケースを設計できる
メリットがある。
これは、通常クランクからロアギヤケースまで、一
直線上に通るシャフトを、エンジン(パワーユニット)
直下で一度ギヤによる1次減速をして後に、ロア
ギヤケースに落ちるシャフトを駆動する機構だ。 |
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通常ロアギヤケースだけで減速するタイプの船外機が多い中、一度減速させることによってギヤケース
内での減速比を少なくすることができる。
つまり、最終減速比を同じくすると仮定すると、ロアギヤケースのギヤの歯数自体を少なくでき、
そのギヤ(歯車)の直径を小さくできることから、より細身のギアケースの設計ができることになる。
よって、細身のロアギヤケースはその水中抵抗の少なさから、同じパワーで蹴る水は効率よく推進力に
還元され、結果よく走るというわけだ。
平たく言うと、水中の抵抗が少ない分、同じパワーなら、より速く走れるし、同じ速度(回転)域なら、より
燃費もいいエンジンだといえるだろう。
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